チャイコフスキーの交響曲第4番について(その1)

チャイコフスキー交響曲第4番の第1楽章は、次のようなホルンのファンファーレで始まります(譜例1)。(楽譜は全て実音で表記しています。)

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この音型は第1楽章で何度も繰り返され、第4楽章の後半にも登場します。

楽章をまたいで同じ旋律や動機を用いる方法を循環形式というのですが、この譜例1の音型が第1楽章と第4楽章に使われていることを指して、チャイコフスキー交響曲第4番が循環形式である、ということは間違いではありません。

ただ、この交響曲第4番を循環形式というなら、もっと重要な役割をしている音型があります。それは(すでによく知られていることですが)4度の音階下行です。

4度の音階下行とは、ある音から4つ音階順に下がることで、例えばドの音から始めれば、ドーシーラーソという音型になります。

この4度の音階下行音型が、交響曲第4番の各楽章で使われ、重要な構成要素になっています。

順に見ていきましょう。

第1楽章では、先ほどのファンファーレの序奏が終わると第1主題が出てきます。

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DesーCー(間にHをはさんで)BーAsという4度の音階下行で始まり、そしてすぐ後にもう一度同じDesーCーBーAsが繰り返され、この4度の音階下行が強調されます。

クラリネットで出る第2主題も4度の音階下行で始まります。

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第2楽章の最初の旋律も4度の音階下行。

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副主題は4つ目のB音が上に跳躍していますが、EsーDesーCーBと4度下行。そして跳躍したB音からBーAsーGesーF、FーEsーDesーCと4度下行を2回繰り返します。

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中間部の旋律もリズミカルになっていますが、同じく4度下行。

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第3楽章の冒頭

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中間部の後半、金管だけで出る音型

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第4楽章の第1主題。最初の音型だけでなく、16分音符の細かい動きの中にも4度下行が含まれています。

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ロシア民謡「白樺は野に立てり」から採られた第2主題。

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その後の副次的な音型も4度下行で出来ています。

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このように、出てくる主題が全て4度の音階下行で出来ていることが分かります。

ここまで徹底的にやっているのは当然意図的なもので、この4度の音階下行が交響曲第4番の中心となる音型ということができると思います。